CLOUDSTREET特別企画

『いつかはフルマラソン!』
― エコシティー 第30回つくばマラソン参戦記 ―

プロローグ

フルマラソンって、どんな感じなのだろう?何故フルマラソンなのだろう?
空を飛ぶ感覚は、空を飛んだ人にしかわからない様に、
それは走った人にしかわからないと言います。
ならば、走ってみるしかないのです。

ランニングに関して、こだわりを持てばいろいろと必要なものはありますが、
パラグライダーと違って、揃えなければならない道具は、それほどありません。
非常に経済的であり、誰でも気軽に始めることが出来ます。

ところが、フルマラソンとなると、短時間では得られないものが必要になります。
持久力、体力(走力)…。
老若男女、誰でも得る事は出来るものの、それはコツコツと積み上げていくしかありません。
しかも、これだけは、お金で買うことが出来ないわけです。

思い起こせばちょうど1年前の今日、2009年11月28日にジョギングを始めました。
初めは2kmも走れませんでした。
身体は重く、息が上がります。走力を培う筋力は微塵もありませんでした。
本当にフルマラソンを走れる身体を手に入れられるのだろうか?
…全く何処を探しても、その根拠を見出す事が出来ませんでした。

それから1年間、無理をしないように何とかジョギングを続けてきました。
最初は、ホノルルマラソンでフルマラソンデビューする計画でした。
ホノルルマラソンは、基本的に制限時間が無く、テレビなどの番組を見ていると、何より雰囲気が良さそうでした。
私の場合、ストイックに記録を狙うわけではなく、あくまでもFun Runなわけですから、ホノルルはうってつけです。
しかし、実際は、昨今のマラソンブームに乗って、なかなかエアーチケットが取れません。
今回はその手配の方法にちょっと失敗し、とりあえず諦める事にしました。

さて、では何処の大会でフルマラソンデビューするか?
地元のつくばマラソンは、既に締め切られています…。
以前からマラソンを走っている友人達から、河口湖マラソンに出ようとお誘いを頂いたのですが、
つくばマラソンがレイトエントリーを募集する情報を得る事が出来、そこに照準を合わせる事にしました。
レイトエントリーはウェブエントリーになります。ウェブエントリーは10時にスタートです。
私は何とかエントリーを完了しましたが、2時間経たないうちにレイトエントリーも締め切られたようでした。

前日11月27日

イーアスつくばにて開会式が行われます。
その前に11:00〜13:00〜15:00〜と、ランナーズカンファレンスが開かれとのことでした。
近場だし、11:00〜からのカンファレンスに参加することにしました。
ランニング学会常務理事の鍋倉賢治氏による「初心者のためのランニングアドバイス」
私にとってはぴったりのテーマであり、いろいろとおもしろく、参考になるカンファレンスでした。

事前に送られてきたプログラムとゼッケン

帰宅後、既に送られて来ているゼッケンをTシャツにつけ、タイム計測用のチップをランニングシューズに装着しました。
夜は、気休めのカーボローディングの為、スパゲティカルボナーラをつくり、本番に備えます。

さていよいよ当日11月28日

スタート3時間前に食事を済ませるため、6時に起床。
いつも以上の量の朝食を終え、ゆっくりとストレッチします。

8時に家を出て、徒歩20分で、スタート地点の筑波大へ到着です。
雲ひとつない綺麗な秋空です。風もほとんど吹いていません。
着替える人、手荷物を預ける人、既にアップする人…。
とにかく人の多さに圧倒されます。今年の参加者は17000人に膨れ上がったとのことでした。

手荷物を預ける人・人・人 既にウォーミングアップをする人・人・人

焦らずにスタートする事。
前半の貯金は後半の借金。
初めの5kmはウォーミングアップ。
初めの5kmのスローペースを35km過ぎに補えるように。
ビルトアップ走のように、後半しり上がりにタイムを縮めるイメージでいければ、
実際はイーブンペースが貫けるそうです。
以上の作戦を頭に叩き込みスタート時間を待ちます。

現地で再びストレッチを施し身体をほぐします。
スタート15分前、スタートボジションに並びます。
スタートボジションは8ブロックに分けられていて、私は最後方のHブロックからのスタートです。

朝早いスタート地点 ウォーミングアップ中

9:30号砲と共にスタートです!と言いたいところですが、最後方のHブロックには、先頭の様子は全くわかりません。
3分くらい過ぎると、ゆっくり隊列が動き出しました。

スタートラインまでのロスは約9分。
スタート地点には、バルセロナやアトランタ五輪に出場した谷口浩美氏が居て、
彼とハイタッチの為の渋滞が起きていました。

かなりのランナー密度の中をゆっくりと走ります。
一定のスピードを保つ事が全く出来ません。
道幅が広くなるとペースが上がり、狭くなったり、カーブに差し掛かるとペースが落ちます。
とにかく前方の人の多さに、興奮さえ覚えます。

17000人と走る一体感、車道を走れる開放感、信号機を気にしなくて良いストレスの無さ。
どれをとっても、普段のランニングでは味わえない感覚です。

5kmの給水所、まだそれほど喉の渇きは無かったけれど、少し給水します。
ペースが速くないので、まだまだ余裕です。

その後6kmあたりで、ミズノランニングクラブによる5時間のペースアドバイザー2人を追い抜きました。
この二人に追い抜かれなければ、4時間台のゴールが可能と言うことです。

実際にGPSで取ったデータを落としてみました

国道408号(西大通り)にでると、やっとランナーの密度が下がり、ペースメイクできるようになってきました。
しかし、絶対にオーバーペースにならないように、GPSとにらめっこです。
このあたりは筑波山を正面に見ながら走ることが出来ます。

10km地点で給水、まだそれほどの喉の渇きはありません。
いつも走っている距離、そしていつもより遅いペースなので、まだ体の何処も全く問題はなさそうです。

クリーンセンター入り口の交差点を左折ししばし国道408号から離れます。
この道はもともと交通量は多くなく、アスファルトの轍も少ない綺麗な道路なので走り易いです。

12kmここでも少し給水、給水すると少々タイムロスはありますが、
給水しないと後々身体に響いてくるので、
粛々とルーティーンをこなします。

13kmを過ぎたところで、既に先頭ランナーが折り返してきました。
先頭集団の選手はレース用のランニングシューズを履いている為、
カリッ・カリッとアスファルトをグリップする音がします。
こちらは、皆ペタン・ペタンって感じで、音の違いに少し笑えました。

15kmでの給水を終え、少し行くと、沿道のラジカセからロッキーのテーマを流しながら応援してくれる人が居ます。
ロッキーおじさんとして有名らしいです…。(とプログラムに書いてありました。)

その後、17km19.5kmの給水を過ぎ、ウェストポーチに入れていたゼリー飲料で、最初のエネルギーチャージをします。
そして最初の関門を無事突破です。
その後、でっかいコーンが置いてある折り返し地点を通過。ハーフを過ぎた時点で、2時間8分(ネット)。
スタート直後のスローペースを考えると、私にとってそれほど悪くないペースです。
まだ疲労もそれほど感じません。

今回用意したマラソン完走セット
下段右から4つをウェストポーチに入れ、
20km以降5kmごとにエナジーチャージします

ヨーシ!後半戦、行ってみよう!!
しかし、ここからは、今まで走ったことのない未知の距離です。
よく35km40kmの壁なんて聞くけれど、どんなものでしょう…?

23kmを越えたくらいで、トイレ休憩をとりました。
それまで給水ポイント近くに必ず仮説トイレがあり、結構行列が出来ていたのですが、
ここまで来ると、待ち時間無しでトイレに入ることが出来ます。
小用をたしたのですが、オシッコ自体はそれほど黄色くなく、意外と給水が上手く行っているのかもしれません。

ザードの「負けないで」を流しながら、応援してくれる人が居たりします…。
かなりベタだけど、やはり嬉しいものです。
応援してもらえるだけで、かなりありがたいのに、個人で飴やチョコレーを配ってくれる人が居たりします。
がんばれー!!という声援に、余裕のあるランナーは、ありがとー!!と答えながら走ります。
見知らぬ人たちとのハイタッチも、走る力に代える事が出来きます。
個人名の入った手書きの横断幕を見るのも面白いです。

ランナーも、トラやカッパ、ペンギンやトトロ、メイドにふんしたおじさんランナーが居たり…。
頭の上には、金魚や熊、レインボーアフロは勿論、バースデーケーキの帽子を被って走るランナーも見ることが出来ました。

ランニングクラブやチームの名前を見ると、関東近県のあらゆるところの地名を見ることが出来ます。
このつくばマラソンは、コースの高低差が少なく、記録を狙いに来る人が多いそうです。

25kmを越えたあたりで、急に足が重くなってきました。そして、疲労と共に急に喉が渇くようになってきたのです。
エナジーチャージをすると共に、給水量が増えてきました。
その後も喉の渇きがいえず、走っていても給水所が待ち遠しい状態になってしまいました。

25kmを過ぎると、足に変調を来たすランナーが途端に増えてきます。
足に変調を来たすランナーは、歩道に上がり、ストレッチを行います。
どのランナーも戦っています。

29km以降の給水所では、カップ3杯づつの水をガブ飲み。
バナナや、アンパン、おしるこの給食が提供されていましたが、
給水するのに精一杯で、全く手を出す事が出来ませんでした。

35km・40kmの壁

国道408号、西大通を南下し、35km近辺からさらに足が重くなり、ペースダウン。
とうとうGPSの表示が7分/kmを示すようになってしまいました。
そこへ来て急な上り坂、かなりのダメージが足に来ます。

36kmの給水所では、紙コップが無くなり給水できず。
そこを越えると、いよいよ筑波大学の構内に入っていきます。
しかしここで、気を抜くわけには行きません。
このまま上手く行けば、4時間30分を切れるペースです。

しかし、38km地点でとうとう太腿に異変が起きてしまいました。痙攣です。
2つ目の折り返しを済ませたところでストップ。
道路の端に寄り、ゆっくり屈伸します。
かなり足が痛いです。
まだ後4kmあるのかと思うと、気が遠くなります。
後は、何処までごまかせるか…。
ごまかしながら走っていると、再び痙攣、再度ストップです。

ストレッチを終え走り出すと、すねの筋肉がつりそうです。
ヤバイ!と思ったところで、40kmの給水、歩きながら足を休めます。

急な坂を歩いて登り、下りになったと同時に走り出します。後もう少し!!
辛くなってからの応援は本当に心に沁みてきます。

もう全く足が
上がっていません。

走っているのか、
歩いているのか、
よくわからないペースのまま
競技場に入ってきました。

オールウェザーのトラックを
走るのは、数十年ぶりです。
懐かしい感覚です。

第3コーナーに差し掛かると、
西に傾いた
日差しが眩しいです。

無事ゴール!

まさに満身創痍でのゴールです。

時間4時間46分18秒
ネット4時間37分12秒

1kmごとのラップタイム
(手元の時計なので若干公式結果との誤差あり)

Lap Time Lap Time Lap Time Lap Time Lap Time
1 6.25 11 6.13 21 6.08 31 6.23 41 8.44
2 6.04 12 6.07 22 6.06 32 6.33 42 7.45
3 6.13 13 5.54 23 6.08 33 6.40 43 1.31
4 5.49 14 5.59 24 6.34 34 7.20    
5 5.56 15 6.00 25 6.10 35 6.32    
6 6.13 16 6.12 26 6.30 36 7.26    
7 5.47 17 5.51 27 6.22 37 6.50    
8 5.55 18 6.03 28 6.15 38 6.55    
9 5.56 19 6.05 29 6.54 39 7.38    
10 6.07 20 6.16 30 6.20 40 7.60    
〜10km 1:00.25 〜20km 1:00.40 〜30km 1:03.27 〜40km 1:10.17 〜42.195km 18.04

今回は天気もよく、ストレスを感じるほどの風も吹かず、絶好のマラソン日和だったようです。
しかし、お昼を過ぎてからどんどん気温が上がり、18℃くらいまで、グランドコンディションは20℃くらいにまで上昇したらしく、
結果的に給水が追いつかなくなってしまった事が、終盤失速の一因なのではないかと思います。

グラウンドコンディション 20101128日(日)

時刻 天候 気温(℃) 湿度(%) 風向 風速(m/s)

9:30

快晴

13.5

77

WNW

1.1

10:00

快晴

14.5

67

NW

1.2

11:00

快晴

18.0

53

W

1.9

12:00

晴れ

20.0

48

W

1.3

※フィニッシュラインで計測

それからこの大会、キロポストごとに、ちょっと面白いメッセージが書かれていました。
それは、歌の歌詞だったり、アニメの有名な台詞だったり、教訓だったり…。
これらも走っていて、楽しめました。

こんな風に…
こちらから全てのキロポストのメッセージが見られます。

ゴール後、クールダウンエリアを歩き、
手渡されたクリスタルガイザーを一気に飲み干しました。

フルマラソンを走った達成感。
応援してくれた人への感謝の気持ち。
何とか完走した自分への小さな賛美。
全身の痛みからの解放。
40km過ぎ、お爺さんといっていいビジュアルの方や女性の方が、
軽快に走っていく中、足が止まってしまった自分の不甲斐無さ。

全てが入り混じって、
…なんだか少し涙が出そうになりました。

シャキッとしているフリを
していますが

実は足が痛くて、
立っているのもやっとです

エピローグ

 沿道の応援、
 手厚いエイドステーションのサービス、
 AEDを背負い数キロごとに
 自転車で待機してくれている救護班、
 かなりホスピタりティのよい大会でした。

 最後に、応援していただいた方々、
 いろんなアドバイスを頂いた
 lancil1975さんsathrmさん
 どうも有り難うございました。

 無事完走出来ました!!

その後…

前日のカンファレンス時、主催者発表によると、参加人数は17000人とのことでしたが、
つくばマラソンのTwitterによる実際の人数は、フルマラソンの場合…。
登録 13849名
出走 12019名
完走 11220名
 だったそうです。

という事は、
登録に対する出走率は
 …86.79%
出走に対する完走率は
 …93.35%

フルマラソンを何とか完走したものの、かなり限界に近かった私には、
93.35%という完走率は驚異的でさえあります。
こんなハードなのに、ほとんどの人が、きちんと完走しているのですね。

また、当日11月28日は、河口湖日刊スポーツマラソン2010と日程が重なっており、
出場者が分散した傾向があったはずです。
大きな大会が重なっても、エントリーはすぐに締め切られ、エントリーさえ出来なかった人も少なくないはず!
そこへ来てかなり高い完走率、もちろん大会を視野に入れてないランナーもいる事を考えると、
普段ランニングしている人口は、いったいどのくらいいるのでしょう。

ランニングブームって恐ろしいですね…。



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