X-TSUKUBA参戦記

いよいよ待ちに待ったX-TSUKUBAの開催です。
X-Alpsに端を発するこの競技、パラグライダーと自らの足のみでゴールを目指す過酷な競技ではあるものの、
extremeであるがゆえに、ロマンを感じるわけです。
記憶が正しければ、国内では長野白馬、紀州大和路に続く3つ目の大会です。

プロローグ
個人的には、加齢と共に体力は衰退、代謝が悪くなると共に体重が増えてきています。
体力の衰退と共に集中力の維持も明らかに衰えてきているの事が自覚できます。
なんだか、負のスパイラルです。
このままではいけないと思い、数年前ランニングを始めました。

日々のランニングやマラソンの大会は、自分の限界を知るのに役立ちます。
私の場合、気持ちの限界は遥か彼方にあるもの、身体の限界は簡単にやってきてしまうのです。

これらトレーニングの根底には、
いつの日か「X」競技に出場してみたいという思いが有ったので、ある意味待望の大会だった訳です。

photo by Kako-chan

調整大失敗
大会参加を目論み、西風が強く吹く日もエリアに通い、仲間とhike upしたり、
1日にランニングする距離を増やしたり。
またそれらは、もう少し身体を絞り体重を減らす為だったりするわけです。
この寒い時期なのに、上手く体重が落ち、70kgを切ることが出来ました。
しかし、これがいけなかった。

3月の上旬、ランニング途中、右足アキレス腱に痛みを感じました。
しかし、気にせず走っていると、痛みは引きました。
プロネーションが悪かったのかと、たいして気にしなかったのですが、
次の日朝起きると、もう歩ける状態ではありませんでした。
調べてみると、「アキレス腱滑液包炎」。
何と言うことでしょう!?完治まで2週間〜6週間とあります。
もう後は、restさせるしか治療の方法はありません。
気は焦るものの仕方ないわけです。

2年前、3月は花粉症が酷く、1ヶ月トレーニングできず。
そんな事では、いけないと思い、昨年はジム通いを予定していたのですが、
震災の影響で、ジムが閉鎖。同じく1ヶ月トレーニングできず。
今年こそは、と思っていたのですが、故障で1ヶ月以上トレーニングできず。
毎年3月はなんだか上手く行かずです。

痛みを感じた時にすぐランニングをストップしていればよかったのかもしれません。
また、新しいランニングシューズを新調したにもかかわらず、
踵のボロボロになった古い靴をいつまでも履いている貧乏性が仇になってしまったことも否めません。

この「X-TSUKUBA」へもギリギリまでエントリーを遅らせ、足の様子を見ました。
直前に病院へ行き、この「X-TSUKUBA」出場への相談もしてみましたが、医者には失笑される始末。
出場を諦めざるを得ない状況です。
しかし、折角軽量装備も調達できたし、どうにも諦めきれません。

この「X」競技に対して、
体力が無いから・・・とか、軽量の装備が無いから・・・とか、
真面目に向き合うと、ちょっと敷居の高い競技なのかもしれません。

そんな中、私の友人のSue-sanは「賑やかしで出場するのだ!」と言います。
清々しいほど潔く、シンプルです。聞いていて気持ちが良い!!
きっと、こういう考え方で良いのだと思います。
まして、本場X-Alpsのように、出場に際し厳しい事前審査があるわけではないのです。
手を上げさえすれば、出場が可能です。

そして、私にはサポートをしてくれるという存在もいるので、
足の症状を悪化さる前に無理をせずその場で、リタイヤする事だって可能なわけです・・・。
という事で、締め切り最終日エントリーしてしまいました。
これで、モヤモヤしていた気持ちはすっきり晴れました。

4月7日土曜日 day1

週末悪天候の周期が終わったのか、
綺麗に晴れ上がりました。
しかし、TOは西風強め。
でも飛べなければ
地上でゴールに向かえば良いのです。
 当然、パラグライダーの大会とは異なるわけです。

三々五々選手がNASA SHOP前に
集まってきます。
いつものパラグライダーの大会とは
ちょっと雰囲気が異なる気がします。

受付を済ませ、
無線機を受け取り、
エネルギー補給の為の食料やバナナを受け取ります。

開会式が行われ、
選手宣誓はゼッケン1番の和田選手。

タスクは想定されていた通り、八郷一周のタスクです。
大会説明を受け、9:30スタートの合図と共に拍手が沸き、 
ファーストパイロン目指して山へ登って行きます。

予想通り、
ファーストパイロン(NASA メインTO)最速登頂は山崎選手。

地上戦重視の軽い装備だとはいえ、
やはり31分で登ってしまうのは、驚異的です。

私が、ファーストパイロンのシリンダーに達する少し手前で、
若山選手、入山選手など
フライトしない事を決めた選手は、
凄い勢いで山道を降りてきます。

間もなくシリンダーに達した私は、
先ほど降りていった選手に完全に煽られていました。
フライトするなら西TO、その場合西にぶっ飛んでしまったら、
かなりのリスクを負うこと、
もし飛べないのなら、
メインTOまで登らず、
このまま山を降りて地上戦という選択の方が、
効率が良いはず。

少々考え山を降りることにしました。
山道が終わる頃、最速登頂の山崎選手もフライトを諦め、簡単に私を抜いてゆきました。

山道を抜け、青空を見上げるとオレンジのSIGMAがフライトしています。
大会無線は長島選手がフライトした事を伝えます。
フォローのなかTOしたようで、
杉の木を蹴飛ばしながら出て行ったそうです。
その後山口選手もフライトしたようです。

サポートしてくれるMIKA-chanへ連絡を取り、旧LDの脇で合流。
ダウンジャケットやフライトスーツを降ろします。
数百グラムではありますが、荷物が軽くなりました。

ここからは、足の調子を見ながら、テクテクとhikeの開始です。
COO SHOPの西側から小道に入りセカンドパイロン(イーストジャパン)を目指します。
この選択が正しかったかは分かりませんが、セカンドパイロン(イーストジャパン)を北東側からゲット。

ゆりの郷の脇を抜け、セカンドパイロン(つくばね)へ上がる道を上がり出すと、
既にパイロンを取った、山崎選手、宮手選手、和田選手の順番ですれ違います。

その後、フルーツラインまで戻り、セイコーマートで、サポート車と合流。
給水給食を行い、四つ目のパイロン(新治TO)へ。

ここでも同じく山崎選手、宮手選手、和田選手の順番ですれ違います。
しかし、明らかに差は開いてゆきます。
エイドステーションでバナナを頂き、その後4thパイロンゲット。

山道を下っていると、ParmのOMEGA8がソアリングしているのが見えます。
ハーネスのポジションからしてSue-sanのようです。
潔いSue-sanも頑張っています。

陸上を行く選手、空を行く選手、この競技を象徴する一枚

photo by 足尾の空賊王さん

5thパイロン(龍神)へはもう少し距離があります。
約14kgの装備は肩に食い込んでくるし、当然足は痛い。
コツコツとトレッキングポールを突き、ペースメイクするものの、
周りには誰もおらず、孤独感は否めません。

マラソンの場合、3時間で走る人も、4時間で走る人も、5時間で走る人も
決して独りになることはありません。
周りの人たちと戦っているという感覚ではなく、
共ににゴールを目指すという感覚に近いと思います。
おまけに、沿道の応援は絶え間なく、もちろんまったっく知らない人たちが、大勢自分を応援してくれるわけです。

それに比べると、だれもいない道路をただ歩くという作業はかなり孤独です。
自分は何の為にここを歩いているのだろう!?・・・かなり疲れてきているようです。
いや、これは修行なのだ!・・・修行なら頑張らねば??
いや、解脱した後そこに何があるのだろう。・・・もう全く訳が分からなくなってきました。

5thパイロン(龍神)を取ると、急に冷えてきて、身体が動かなくなってきてしまいました。
ハンガーノックのような状態!?
サポートカーと合流し、車に積んであったジェルやクラッカーやパンを身体に流し込み、
もう少し歩く事にします。

故障した足が痛み出したわけではなかったのですが、そろそろ潮時!?
明日に体力を残しておかなければいけないしと、
頭に浮かぶ言葉は、ネガティブな事ばかり。
少し時間は早かったのですが、運動公園で再びサポートカーと合流し、
そこでトレッキングポールをたたみました。
day1終了・・・。

day1 result

4月8日日曜日 day2


― : hike  ― : fly

今日も良い天気です。
今日も想定タスク通りクロカンタスク。
ゴールは白河です。
今日のタスクボード

大会2日目スタート。
今日もファーストパイロン(NASA メインTO)最速登頂は山崎選手。
スタミナは衰えを知りません。やっぱり凄い!!聞きしに勝るパワーです。

一旦メインTOに待機するものの、西風は止みません。
結局ほとんどの選手は西TOへ移動。
西TOは、ハングフライヤーに一般のパラフライヤーに、
かなり混み合っています。

しかし、コンディションは良好のようです。
慌てても仕方ないので、マイペースで準備します。
Sue-sanが出て、印南選手が出てその後にTO。
無線の様子では、なんだか最後のTOだったようです??

サーマルは良好なのですが所詮風が強く、上手くソアリング出来ません。
というか、それ以前に、ハーネスのセッティングが良くなく、七転八倒!?
実は、大会前コンディションの良さそうな日はクロカンにかまけ、
全くハーネスのセッティングを出していなかったのです。
もちろんシュミレーターにおけるセッティングはしていたのですが、
実際に飛ぶのとは大違い。・・・全く愚かです。
上半身のセッティングは問題ものの、
ポッド側のセッティングが窮屈すぎるのです。

明らかに、冷静さを失っていました。
サーマルに流される事無く、
西側から上がるサーマルを捕えなければいけないのに、
低い高度のままサーマルを追いかけ、東側にこぼれてしまいました。
もうこうなったら、西側に戻る事は出来ません。
ならば盆地側のリーサイドのサーマルを探すしかありません。

フォローを背負って北東へグライド開始。
リーサイド側はそれほど荒れてはいませんが、さっぱりピッチアップしません

狙うは板敷エリア。
しかし、板敷で飛んでいるハングもソアリングすることなくLDしています。
ウーン、盆地に降りてしまうという大失態か!?
昨日に引き続き、もうリザルトどころじゃないなぁと思っていると、
グライダーは一気にピッチアップ。

地表は北西、上空は南西、
サーマルというよりコンバージェンスのような感じ。
楽しいサーマルというわけにはいきません。

普段は装備重量100kg前後でフライトしているのに、
今回は、軽量装備なので、90kmを越えるのがやっと。
今日の強めのコンディションを飛ぶには、
ちょっと装備重量が軽すぎるわけです。
グレークを引いても、かなり鈍くしかロールインしません。
荒れているので、
キャノピーがクシャクシャと音を立てながら何とか1220mまでゲイン。

そのまま、羽黒山へ向かいます。
しかし、西風が強くかなり厳しい状況です。
羽黒山の西側へ回り込みたかったのですが、
国道50号上空は思いのほか西風が強く、
結局ここでも羽黒山のリーサイド側のサーマルを探るしかなくなりました。
なんとか1040mまで回復。

その後は高峯へ。
しかしここで、ガッツリ上げ直す事は出来ず、
高度750mで北側にこぼれてしまいまいました。
真ん中の尾根を北上、
希望ヶ丘ゴルフ場の手前高度510mでサーマルゲット。
1400mまで回復。

次のサーマルで1600mまで回復したものの、
結局その高度を使いきり、ツインリンク西側にLD。

昨日のhikeで身体は疲弊してしまっているし、
集中力も全く無く、駄目駄目なフライトでした。
これ以上hikeで距離を伸ばす気力も無く、
国道123号線まで出て、
サポートカーと合流。
今日はここで、トレッキングポールをたたみました。

後で聞いたのですが、
一緒にグライドしたparmのOMEGA8は、尾崎選手だったらしく、
茂木の道の駅方面へグライドし、上手く上げなおした後、
伊王野までフライトしたそうです。

いろいろな意味で、今日は茂木が限界だったのだけれど、
尾崎選手と同じサーマルに乗れれば、
もっと距離が伸ばせたという事だったのかもしれません。
・・・しかし、あくまでこれも「タラ・レバ」のはなし。

道の駅茂木へ行き、サポートしてくれたMIKA-chanと
おとめミルクの行列に並んでいると、
その列の後方に宮手選手を発見。
昨日1日hikeした宮手選手もここで終了のようです。

おとめミルクを食べていると、
既にビールを飲みリラックスタイムに入っていた和田選手に遭遇。
まだまだhikeする気満々の印南選手とも遭遇。

エイドステーションを設営していた苗ちゃんとも合い、
近くに下りた山口選手を回収してNASAへ帰るとの事。

道の駅茂木では、各々の局面を垣間見たようで、面白かったです。

結局Topは昨日に引き続き呉本選手、完全優勝です!

完全優勝は呉本選手

Photo by 「そらにくも うみにかぜ やまにはな

どの選手も一生懸命自分の限界に向き合う姿は、清々しく美しかったです。

day2 result
Total result

大会のログはこちらから 足尾バーチャルフライト

flyのみでゴールしたのでは、ただのパラグライダーの大会になってしまうし、
そういう意味でもfly & hikeで両日共に、ゴールもメイクした選手、ならびにタスクセッティングは完璧でした。
本当に良い大会でした。

個人的には、全く結果は出ませんでしたが、新しい競技に参加することが出来た事を嬉しく思います。
そして、次回機会があれば、可能な限り完璧な準備をし、再び参加したいと思います!!

その他の写真はこちらから。

各選手のレポートはこちらから・・・

呉本圭樹選手  呉本圭樹blog
竹内俊二選手  えあくろすな日々
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